2007年 07月 22日
東京国立近代美術館で開催中の「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」に行ってきました。 約350点の写真作品が撮影した国や地域、あるいはテーマごとに展示されていて、 ブレッソンの仕事の全貌が見渡せるようになっていました。 写真集のタイトルになった「決定的瞬間」の数々を目の前にして久々に興奮しました。 上映していたインタビュー映像の中でブレッソンは 「数々の決定的瞬間に立ち会えたその偶然に感謝している」 みたいなことを語っていました。 その一瞬を待つあいだ、私は神経の束になる。 この感覚はどんどん大きくなり、そして爆発する。 それは空間と時間があらためて結ばれた肉体的な喜びであり、ダンスだ。 そう! そう! そう! そう! (展覧会カタログより) ただの「決定的瞬間」ではなく、そのクライマックスの訪れをじっと待つ・・・。 すごいエネルギーですね。そしてその偶然に遭遇する才能、 別の言い方をするなら「感性」も大切なのだろうな、と思ったものです。 私にとって重要なのは、視覚的な態度と感情だ。視覚的な態度とは、構造。つまり幾何学のことだ。幾何学がなければ、別のものになってしまう。そしてまた感性をもっていなければならない。いまや人は何だって学ぶことができるーーどうやって愛し合うかを教える本さえあるんだからーーしかし、感性を教える学校はない。 (展覧会カタログより) そしてもうひとつ感心したことは、ブレッソンの「構図」に対するこだわりです。 私のパッションは、決して写真“そのもの”に向けられているわけではなく、自己そのものも考慮から消し去りつつ、主題やフォルムの美しさから誘発される感動を、一瞬のうちに記録できないかという可能性に、向けられているのだ。言うなれば目前に差し出された被写体によって呼び起こされる幾何学を得られないだろうか、と。写真のシャッターを切るというのは、私としては素描ノートの一片なのだ。 (展覧会カタログより) もともと画家を目指していたというだけあって、その言葉には説得力があります。 このことを念頭において展示作品を見ていくと、たしかに構図に無駄がなく、 また光を読み影を上手に生かしていることがよくわかります。 そして最後に。 ブレッソンの「カメラと撮影」に対するこだわりぶりが伝わってくる一文を 展覧会カタログから抜粋してみます。 なるべく目立たないようにするために、黒塗りのライカを愛用していたというのは、HCBについてよく知られたエピソードである。・・・当時、HCBはライカのボディとコンタックスのf1.5レンズを組み合わせていた。ライカは理想的なカメラだったが、レンズには不満があった。少しでも速いシャッターを切るためには明るいレンズが必要だったのだ。・・・一方で彼は、手持ちで4分の1秒のシャッターを切るために、「運動選手のようにトレーニング」を積み、節制していたともいう。撮影の様子を木村(伊兵衛)は次のように描写している。「被写体を探したら、右の足は後へ一歩退き体の安定を保ち、両手、両指は熊手のごとく拡がり、クレーンが思い荷物を引き揚げるようにカメラを安定させる、素晴らしい構えとなっている」。また木村は、レンズの使い方にも注目した。「もっぱら50ミリですが、他に35ミリと90ミリを両方のポケットに入れているんです。そして被写体に応じてレンズ交換をやるわけなんだが、そのすばやいこと、しょっちゅう実に小まめにレンズを替えるんです」。こうしたすべては、「シャッターを切る瞬間は、全神経が眼に集まるのではないかと思われるほど眼もとにカメラがぴったりくっつく。と同時にシャッターを切る、その速さは驚くほどである」と木村が描写した、その瞬間のために、ふだんから周到に整えられていたのだ。 (展覧会カタログより) 偉大なる写真家といわれる人も、持って生まれた才能にあぐらをかいているだけでは優れた作品は残せないのですね。 とても真似できません・・・真似しても無駄なことはわかっているし・・・。 ま、とにかく、いい刺激になりました。
by fct_k10d
| 2007-07-22 02:48
| 備忘録
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写真とFC東京の日々。
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